小さな波、やさしい朝〜Small Waves, Gentle Beginnings〜
まだ空に薄暗さが残る冬の朝、鵠沼のビーチに一番乗りした。
海は静かで風もない。水面はガラスのように凪ぎ、江ノ島の向こうから朝日がじわじわと昇ってくる。雲ひとつない空には、雪をまとった富士山がくっきりと浮かんでいた。
波は小さい。
それでも、見慣れたローカルの顔ぶれが、すでにラインナップに浮かんでいる。ボードの上でゆらゆら揺れながら、朝の海に身を任せている。
「おはよう」
「今日もスモールだね」
「まぁ、入っちゃえば関係ないよな」
そんな他愛のないやりとりが、水面を伝って届く。
肩まで浸かると、セミドライ越しに、海水の冷たさがじわりと伝わってくる。
僕は思わず笑ってしまう。
「みんな、好きだなあ」と。
波がなくても、寒くても、こうして今日も誰かがここにいる。
波待ちのあいだ、言葉少なに漂うだけでいい。
江ノ島と富士山が、静かに僕たちを見守ってくれているような気がする。朝の光が水面に差し込み、心の奥をそっとほぐしてくれる。
いい波じゃなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。
こうして海に入り、仲間と少しの時間を分け合える。それだけで、今日がやさしく始まる。
日々是好日なり
Ryuei


