波待ちダイアリー48 小さな波、やさしい朝〜Small Waves, Gentle Beginnings〜

小さな波、やさしい朝〜Small Waves, Gentle Beginnings〜

まだ空に薄暗さが残る冬の朝、鵠沼のビーチに一番乗りした。

海は静かで風もない。水面はガラスのように凪ぎ、江ノ島の向こうから朝日がじわじわと昇ってくる。雲ひとつない空には、雪をまとった富士山がくっきりと浮かんでいた。

波は小さい。

それでも、見慣れたローカルの顔ぶれが、すでにラインナップに浮かんでいる。ボードの上でゆらゆら揺れながら、朝の海に身を任せている。

「おはよう」

「今日もスモールだね」

「まぁ、入っちゃえば関係ないよな」

そんな他愛のないやりとりが、水面を伝って届く。

肩まで浸かると、セミドライ越しに、海水の冷たさがじわりと伝わってくる。

僕は思わず笑ってしまう。

「みんな、好きだなあ」と。

波がなくても、寒くても、こうして今日も誰かがここにいる。

波待ちのあいだ、言葉少なに漂うだけでいい。

江ノ島と富士山が、静かに僕たちを見守ってくれているような気がする。朝の光が水面に差し込み、心の奥をそっとほぐしてくれる。

いい波じゃなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。

こうして海に入り、仲間と少しの時間を分け合える。それだけで、今日がやさしく始まる。

日々是好日なり

Ryuei

→波待ちダイアリー47 あと一本の魔法

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA