夕方、サイズが少し上がった。
胸肩、ときどきヘッドハイ。
ラインナップには、上手い顔ぶれが揃っている。
自然と空気が張りつめる。
「ここでワイプアウトはしたくないな」
心の奥で、カッコつけの僕が、小さくつぶやく。
本当は、あの波に行きたかった。
少し掘れて、速いけれど、
乗れたらきっと気持ちいい一本。
でも、
誰が見ているかを、先に考えてしまう。
格好悪く見えないか。
無理していると思われないか。
下手だと思われないか。
その瞬間、
波ではなく、人を見ている。
結局、安全な波を選び、
無難に一本乗って、
「まあ、悪くない」と自分を納得させる。
でも胸の奥は知っている。
あれは、本当に乗りたかった波ではなかった、と。
若い頃の自分は、
職場はもちろん、海の上でも、人の目に合わせていた。
自分の感覚より、
どう見られるかを優先していた。
そうやって、
少しずつ、
自分の中のガイダンスを手放していく。
シニアと呼ばれる年齢になった今、
ようやく分かる。
波は、
誰かを喜ばせるために来るのではない。
あの波に行くかどうかは、
いつだって、
自分がどう感じているかだけだ。
人の目に合わせ続けると、
静かに、自分が遠ざかる。
あのチキンゲームのような空気も、
今なら少し、可笑しく思える。
結局、
海はいつも、
自分に正直であれ、と言っているだけなのだ。
日々是好日なり
Ryuei
