僕はサラリーマンの傍ら、イラストやエッセイ、それに小説といったアーティストワークをやっている、いわば二足のわらじ。
だから、サーフィンができるのは早朝だけだ。
なので、波が無かろうが、風が強かろうが、冬の暗くて寒い朝だろうが、基本、海に入る。
ではあるのだが、
湖か!と思ってしまうような凪いでいる日には、ついつい、ラインナップの先で操業している漁船に期待してしまう。
ヴゥオォォ──。
力強いエンジン音が聞こえ、煙突から白い煙が吐き出されると、期待に胸が膨らむ。
ゆっくり漁船が動きだす。
すると数十秒後、その航跡が一本の波となって、ゆっくりとこちらへやって来るのだ。
僕は、それを密かに楽しみにしている。
勝手に名前を付けるなら、
「漁船ウェイブ」
自然が作る波ではない。
でも、海からのちょっとしたプレゼントみたいで、なんだか嬉しい。
凪いだ海に一本だけ現れるその波は、天から垂れてきた蜘蛛の糸のように見える。
同じ思いで、ひたすら沖を見ながら波待ちしている他の連中も、みんな一斉に方向転換して、その波を追い掛ける。
なんとも平和な光景である。
もし僕が漁船の船長だったら──
波を待ちわびるサーファーたちを見るなり、
きっと何度も沖を行ったり来たりするだろう。
「ほら、もう一本!」
なんて心の中で言いながら。
もちろん、本物の漁師さんには仕事があるので、そんなことはできない。
だから今日も僕は、
漁船が沖を通るたびに、
少しだけ期待してしまうのである。

日々是好日なり
Ryuei
Surfer・Author&Illustrator