10月某日。アメリカに赴任中の友人が、ひと時、帰国したので、横浜は関内駅で待ち合わせ、街の案内方々ディナーした。
夕刻の関内。改札を抜けた瞬間、空気の温もりが少し変わる。
古い石造りの建物と並木道。歴史の残り香のような静けさが街を包む。
かつては開港の玄関口として異国と日本が交わった場所。今もその空気は、どこかゆったりとしている。
関西生まれ・育ちの友。神戸の中華街は詳しいが、横浜の中華街はあまり、というので、足を中華街へと向けた。
駅から近い延平門をくぐると、香辛料と焼き物の香りが鼻をくすぐる。喧騒と異国情緒が入り混じるこの空間は、いつ訪れても旅の入り口のよう。
神戸と比べての規模の大きさに、友も驚きを隠せない様子。
中華街を抜け山下公園へ。海風が頬を撫で、潮の香りと夕暮れの光が溶け合い、柔らかな金色に染まっていく。
歩を進めるに従い静けさが増し、氷川丸の向こうに夜の帷が静かに降りる。
そしてディナーは、老舗「スカンディア」。
クラシカルな内装と控えめな照明。窓の外には港の夜景。時間が少し巻き戻ったような、安らぎがそこにはある。
友との久しぶりの語らいにふさわしい、横浜の黄昏。
彼は明日、羽田から航路、アメリカへ戻る。関内の不思議な旅情とノスタルジーを余韻に。
Ryuei





