波待ちダイアリー51 チョコチップ、言いまんねん~Chocolate Chip Camo, Waiting for Waves~

「チョコチップ、言いまんねん」

不意に声をかけられて振り向くと、牛乳瓶の底みたいな分厚い眼鏡をかけた、いかにも軍事オタク然とした関西弁の店主が、迷彩柄のジャケットを手にした僕にドヤ顔で語り始めた。

湘南Tサイトの蚤の市。

骨董やビンテージ好きの僕は、アーミーやネイビーの古着が並ぶテントにいた。朝イチサーフィンは、自宅と海をチャリンコで往復する。冬場は風が冷たいから、ウェットの上から羽織れる防寒着を探していた。

MA-1が平気で三万円の値札をぶら下げる中、その迷彩ジャケットだけが六千円。妙に安い。

正式には「チョコチップ・デザートカモ(Chocolate Chip Camouflage)」。

1980年代に米軍が作り、湾岸戦争にも投入されたが、中東の砂漠では逆に目立ってしまい、ほどなく使われなくなった迷彩らしい。

「でもね、お客さん。裏地は炭素繊維ですわ。どんなガス来ても大丈夫」

勝ち誇ったように言う店主の説明を、半分聞き流しながらも、六千円という価格には抗えず、この冬、僕はそのチョコチップ迷彩を羽織ってビーチに現れている。

早朝の鵠沼。

チャリンコで波チェックをしながら銅像下あたりに差し掛かると、R134のマックから、揚げたてのポテトの香りが一気に流れ込んでくる。

店主自慢の『炭素繊維』は、ポテトガスの誘惑にはまったく無力で、空っぽの胃袋から、思わず「ぐ〜っ」と降参の音が漏れた。

今日の波も、どうやら良さそうだ。

日々是好日なり

Ryuei

→波待ちダイアリー50 師匠がくれた一冊

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