〜盲亀浮木(もうきふぼく)〜
仏教におけるたとえ話。高齢の盲目の亀、百年に一度だけ海面に浮上するという。と、穴の開いた木片が海面を漂っており、浮上する亀がその穴に頭を入れるという話で、転じて物事の儚さ、稀有な巡り合わせの有難さを説くもの。志賀直哉に同名の短編小説があり、僕はこの話が好き。
自分の命に思いを馳せると、その命は、ご先祖様に紡いで頂いた奇跡でしかない。10代遡るだけで1,024名のご先祖様がおり、20代遡るとなんと1,048,576名に及ぶ。それぞれのご先祖様が、パートナーとなるご先祖様に出会い、次のご先祖様を産む。その全てのタイミングが精妙にピタリと重なり合った結果が今の自分。
この奇跡の命を使って、僕は今日も波に乗る。この一本の波だって遥か遠洋で起こった数多のうねりが、徐々に共振し集約されていき、その長い旅路の果てに最後、一本の波となり、僕らサーファーの目の前に現れる。奇跡の命が奇跡の波に出会う、正に盲亀浮木としか言いようがない。だから、今この一瞬を丁寧に生きたいと思う。命や波の奇跡を感じながら。
Ryuei