The Law of the Wave 波の理52〜ワンセットの理〜The Quiet Gift of Duality〜

ワンセットの理 〜The Quiet Gift of Duality〜

夜明け前の鵠沼は、まだ息をひそめていた。

薄い雲の向こうから滲む光が、濡れた砂に細い金の帯を描いている。

僕はその端に立ち、寄せも返しもしない海を、ただ静かに見つめていた。

沖ではわずかなうねりが揺れ、遠くの影たちがじっとその気配を待っている。

どうして波のない朝は、こんなにも手持ち無沙汰なのだろう。

どうして小さくても波が立つだけで、胸の奥がふっと温かくなるのだろう。

ふいに、その答えのようなものが背中越しの風とともにやってくる。

空腹があるから、一口目の味は深く沁みる。

凪が続くから、一筋のうねりに心が動く。

満たされなさや停滞は、喜びを受け取るための“裏面”で、

どちらか片方だけでは、ひとつのコインは成立しない。

足もとに落ちていた光の帯が、ゆっくりと色を変えた。

その瞬間、沖から控えめなセットがひとつ入ってくるのが見えた。

小さくても、たしかに「波」と呼べるものが、まっすぐこちらへ向かってくる。

胸の重さが、ふっと軽くなる。

待つ時間も、満たされる時間も、

そのどちらもが、ひとつの“ワンセット”なのだと知りながら。

日々是好日なり

Ryuei

→波の理51 五戒の理

→波の理53 念の理

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA