The Law of the Wave 波の理54 投げかけたものが返ってくるの理〜What You Give, Comes Back 〜

投げかけたものが返ってくるの理〜What You Give, Comes Back 〜

夕暮れの海。

波は小さく、セットも不規則なせいか、サーファーも少ない。

でも、そんな日のほうが、海の呼吸がよくわかる気がする。

ラインナップに出ると、見覚えのある顔がいくつか。

軽く会釈を交わし、少し間隔を空けてボードを回す。

言葉はなくても、海の中には静かな秩序がある。

ひとつの波を、少し遠慮がちに待っていた、髪を後ろで結った若いサーファーに譲った。

タイミング的には自分が乗れたかもしれないが、なぜか迷いはなかった。

彼女は一瞬きょとんとした表情をして、すぐに照れたような笑顔で小さく頭を下げた。

その仕草が、水面にやさしく溶けていった。

しばらくして、自分の前に一本の波が入ってきた。

今日いちばん、素直なフェイスを持った波。

さっき投げかけた気持ちが、かたちを変えて戻ってきたように感じた。

「投げかけたものが返ってくる」

そんな言葉が、ふと胸に浮かぶ。

許せば許され、笑えば笑顔が返る。

波も人生も、出したものが巡って戻ってくるだけなのかもしれない。

逆に、悪口や愚痴を口にした日のことも思い出す。

なぜか波は回ってこず、周囲との距離だけが広がっていく。

言った瞬間に、自分の世界が少し狭くなるような感覚。

裁く言葉は、いつも自分を先に縛る。

波は選べない。

けれど、どう振る舞うかは選べる。

それは、どんな海でも、どんな人生でも、

自分に残された唯一の自由だ。

「喜ばれるように生きる」

最初はきれいごとに聞こえても、やってみると案外ラクだった。

損得勘定から始めてもいい。

巡り巡って、いちばん得をするのは、結局自分なのだから。

波待ちの静けさの中で、今日もそんなことを思う。

潮の香りと水平線に沈む太陽の光が、すべてをゆっくり流していった。

日々是好日なり

Ryuei

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA