The Law of the Wave 波の理55 神の領域の理〜In God’s Domain 〜

『神の領域の理』〜In God’s Domain 〜

朝は、まだ暗いうちから目が覚める。

朝イチサーファーの習い性だ。

コーヒーを淹れ、ストレッチをし、セミドライに着替えたら、ボードを抱えて自転車にまたがる。

ほんの数分で海に着くと、三浦の稜線がほんのり白み始めている。

風は穏やかで、うねりも悪くない。

やるべきことは、すべてやった。

あとは、海に入るだけだった。

けれど、すぐには波は来ない。

何本か気配はあっても、

こちらの思い通りには割れてくれない。

波待ちをしながら、自分の中に小さな焦りがあることに気づく。

「そろそろ来てもいいのに」

そんな期待を、いつのまにか握りしめていた。

そのとき、風が少し変わった。

潮の匂いが濃くなり、遠くのうねりの形が、わずかに揺らぐ。

ああ、ここから先は、神の領域なんだな、と思った。

準備も、努力も、選択も、今日の自分にできることは、すべてやった。

でも、波が来るかどうかは、もう自分の仕事じゃない。

そう思った瞬間、胸の奥で何かがすっとほどけた。

期待も、計算も、手放して、ただ海に浮かんでいる時間になる。

結果がどうあれ、今日の自分はやるべきことをやった。

そこまでで十分だ。

その先は、神の領域に委ねればいい。

波の音だけが、変わらず耳に届いていた。

日々是好日なり

Ryuei

→波の理54 投げかけたものが返ってくるの理

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