
サーフィンをしていると、沖からやってくるうねりを見た瞬間、
「あ、これだ」
と思うことがある。
その波に乗れると決まったわけでもないのに、なぜか身体が反応する。
ボードの向きを変え、うねりを見ながらパドルを始める。
理屈より先に、身体が動いている。
そして、その瞬間はたいていワクワクしている。
以前の僕なら、こういう感覚を単なる気分の高揚だと思っていた。
いい波が来たから嬉しい。
乗れそうだからワクワクする。
ただ、それだけ。
でも最近は、少し違うように思う。
ワクワクするというのは、
「こっちだよ」
と、自分自身が教えてくれているサインなのではないか。
僕の場合、頭で考えすぎるとうまくいかないことがある。
もっといい波が来るかもしれない。
失敗したら嫌だ。
さっき乗れなかったから、今度こそ乗らなければ。
そんなことばかり考えていると、目の前にやってきた波を見失う。
逆に、
「これ、乗りたい」
と思った瞬間に動き出した時は、不思議とうまくいく。
もちろん、いつも成功するわけではない。
パーリングもするし、乗り遅れることもある。
それでも、その瞬間の自分は間違いなく「今」にいる。
過ぎてしまった波でもなく、
まだ見えない次のセットでもなく、
目の前にある一本の波と向き合っている。
「今を大切にする」という言葉は、ともするとスピリチュアルな精神論のように聞こえる。
でも、本当はもっと現実的なことなのかもしれない。
僕たちが実際にパドルできるのは、今、目の前にある波だけなのだから。
人生も同じなのだと思う。
いつか自由になったら。
いつかやりたいことができるようになったら。
いつか理想の場所に辿り着いたら。
その時になったら幸せになろう。
そうやって幸福を未来へ預けてしまうと、「今」はいつまでも幸福になるための準備期間になってしまう。
でも、未来というものが「今」の連続によってできているのなら、
未来で笑っていたい人は、今も笑っていた方がいい。
未来でワクワクしていたい人は、今もワクワクする方を選んだ方がいい。
苦しみ抜いた先には、苦しみしかないように思える。
沖から次々とうねりがやってくる。
どの波を見るか。
どの波に反応するか。
そして、どの波に向かってパドルを始めるか。
選んでいるのは、自分だ。
直感とは、成功する波を教えてくれるナビではない。
もしかすると、
「そっちの方が、あなたらしいよ」
と教えてくれる、小さな合図なのかもしれない。
だから今日も、僕はその感覚を大切にしたい。
沖からやってくるうねりを眺めながら、
心が少し動いた、その一本へ。
考えすぎる前に、ボードを返す。
そして、パドルを始める。
今、目の前にある波に乗るために。
Ryuei
Surfer・Illustrator & Author