30年前、サーフィンに出会い、新婚生活を鵠沼海岸で始めた。
当時の勤務先は東京、丸の内。
片道1時間45分の通勤も苦にならず、僕の湘南、サーフィンライフは幕を開けた。
その後、茅ヶ崎、辻堂と住まいを移し、そのたびに新しいポイントで、新しい波友とサーフィンを楽しんだ。
だけど転勤で関西に移動してからは、東京、香港と渡り歩き、海はもちろん、サーフィンからも離れた。
ようやく、子育てを終え、湘南に帰還したのが5年前。
日常が、潮の香りの中に戻り、サーフィンを再開した。
15年ぶりの海。
今の僕は、サラリーマンとアーティストの二足の草鞋を履いているので、サーフィンは出勤前の早朝オンリー。
気づけば、サーフィンを中心に生活を組み立てるようになり、ほぼ毎朝、海に入っている。
こんな人生になるなんて、30年前に初めてボードを手にしたあの日、思ってもみなかった。
サイズが小さくとも、海に入る。
海の上でボードにまたがる。
左手に江ノ島、右手には山頂が朝日でピンク色に染まる富士山。

空にはトンビが舞い、ラインナップで波を待つ。
呼吸が整い、海のリズムと同調していく。
やがて、波友たちも海に入ってきて、他愛のない話で盛り上がる。
至福の時間だ。
ふと、思う。
もし、サーフィンと出会っていなかったら、どんな人生を送っていたのだろう。
仕事に追われる毎日を送り、休日は家で過ごすことが多かったかもしれない。
海へ向かう理由もなく、朝焼けを見る機会もなかっただろう。
もちろん、今朝、一緒に笑っていた波友たちとも出会うことはなかった。
今のようにイラストを描いていただろうか。
小説を書いていただろうか。
そう考えると、サーフィンは僕にとって単なる趣味ではない。
人生の分岐点だ。
自然と向き合うこと。
自分より大きな力を受け入れること。
焦らず、自分の波を待ち、そして波に委ねること。
サーフィンは、人生の多くを教えてくれた。
そして何より、波友との出会いを与えてくれた。
海では、年齢も職業も関係ない。
みんなただのサーファーだ。
波を譲り合い、笑い合い、ときに励まし合う。
そんな仲間がいることは、人生を豊かにしてくれる。
波に乗るために海へ通っていると思っていた。
でも、本当は違ったのかもしれない。
僕は、自分らしい人生を取り戻すために海へ通っていたのだ。
あの日、サーフィンと出会っていなければ、今の僕はいない。
そして、今追いかけているアーティストとしての夢も、きっと生まれていなかった。
神様、あの日、僕をサーフィンに導いてくれてありがとう。
Ryuei
Surfer · Author & Illustrator