波待ちダイアリー71 ~サーフィンと出会ってなかったら~If I Had Never Found Surfing~

30年前、サーフィンに出会い、新婚生活を鵠沼海岸で始めた。

当時の勤務先は東京、丸の内。
片道1時間45分の通勤も苦にならず、僕の湘南、サーフィンライフは幕を開けた。

その後、茅ヶ崎、辻堂と住まいを移し、そのたびに新しいポイントで、新しい波友とサーフィンを楽しんだ。

だけど転勤で関西に移動してからは、東京、香港と渡り歩き、海はもちろん、サーフィンからも離れた。

ようやく、子育てを終え、湘南に帰還したのが5年前。

日常が、潮の香りの中に戻り、サーフィンを再開した。

15年ぶりの海。

今の僕は、サラリーマンとアーティストの二足の草鞋を履いているので、サーフィンは出勤前の早朝オンリー。

気づけば、サーフィンを中心に生活を組み立てるようになり、ほぼ毎朝、海に入っている。

こんな人生になるなんて、30年前に初めてボードを手にしたあの日、思ってもみなかった。

サイズが小さくとも、海に入る。

海の上でボードにまたがる。

左手に江ノ島、右手には山頂が朝日でピンク色に染まる富士山。

画像
Before the world awoke, Mt. Fuji blushed pink.

空にはトンビが舞い、ラインナップで波を待つ。

呼吸が整い、海のリズムと同調していく。

やがて、波友たちも海に入ってきて、他愛のない話で盛り上がる。

至福の時間だ。

ふと、思う。

もし、サーフィンと出会っていなかったら、どんな人生を送っていたのだろう。

仕事に追われる毎日を送り、休日は家で過ごすことが多かったかもしれない。

海へ向かう理由もなく、朝焼けを見る機会もなかっただろう。

もちろん、今朝、一緒に笑っていた波友たちとも出会うことはなかった。

今のようにイラストを描いていただろうか。

小説を書いていただろうか。

そう考えると、サーフィンは僕にとって単なる趣味ではない。

人生の分岐点だ。

自然と向き合うこと。

自分より大きな力を受け入れること。

焦らず、自分の波を待ち、そして波に委ねること。

サーフィンは、人生の多くを教えてくれた。

そして何より、波友との出会いを与えてくれた。

海では、年齢も職業も関係ない。

みんなただのサーファーだ。

波を譲り合い、笑い合い、ときに励まし合う。

そんな仲間がいることは、人生を豊かにしてくれる。

波に乗るために海へ通っていると思っていた。

でも、本当は違ったのかもしれない。

僕は、自分らしい人生を取り戻すために海へ通っていたのだ。

あの日、サーフィンと出会っていなければ、今の僕はいない。

そして、今追いかけているアーティストとしての夢も、きっと生まれていなかった。

神様、あの日、僕をサーフィンに導いてくれてありがとう。

Ryuei
Surfer · Author & Illustrator

→波待ちダイアリー70 四年前の一言

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