波待ちダイアリー 79〜時間は存在しない〜The Wave That’s Already There

Ryuei
Surfer・Illustrator&Author

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                                                           L’ordine del tempo

ボードにまたがって波を待つ。

最近気づいたのだけど、不思議なことに、時間の感覚がなくなることがある。

一時間入っていたはずなのに、ほんの二十分くらいに感じる日もあれば、一本の波を待つ数分間が、ずいぶん長く感じられることもある。

時計が刻んでいる時間と、自分が感じている時間は、どうやら同じものではないらしい。

先日、カルロ・ロヴェッリという物理学者の『時間は存在しない』という本を読んだ。

途中、僕の頭ではなかなか追いつけないところもあったけれど、実に読み応えのある本だった。

特に印象的だったのは、最先端の物理学を紐解きながら、僕らが当たり前のように思っている、

過去があって、

現在があり、

その先に未来がある、

という流れが、どうもそうではないらしい、という示唆。

波待ちしながら反芻してみる。

沖に目をやると、まだブレイクしていない、一本のうねりがこちらへ向かってくる。

僕にとって、その波は「未来」にある。

やがて自分のところへやってくる。

パドルを始める。

テイクオフする。

その瞬間、未来だった波は「現在」になる。

そして波を降り、振り返れば、その一本はもう「過去」になっている。

未来。

現在。

過去。

でも、本当にそうなのだろうか。

波そのものから見れば、それは最初から最後まで、ひとつの海の中で起きている出来事にすぎない。

僕がどこにいるかによって、それを未来と呼んだり、現在と呼んだり、過去と呼んだりしているだけなのかもしれない。

そんなことを考えていると、もうひとつ妙な想像が浮かんできた。

僕らは未来へ向かって進んでいると思っている。

でも、ひょっとすると逆なのではないか。

沖からやってくる波のように、未来の方から僕らへ近づいてきているとしたら。

もちろん、これは物理学の話ではない。

ただの、波待ちをしているサーファーの空想である。

それでも僕は、この想像がけっこう好きだ。

沖には無数のうねりがある。

すべての波に乗ることはできない。

その中から、

「あ、これだ」

と思う一本を見つける。

ボードの向きを変える。

パドルを始める。

そして、その波の速さに自分の速さを合わせていく。

波をこちらへ引っ張ってくるわけではない。

自分の方が、その波に乗れる場所へ動いていく。

人生も、案外そんなものなのかもしれない。

未来を無理やりこちらへ引き寄せようとするのではなく、

「これだ」

と思える未来を見つけたら、そこへ自分を合わせていく。

気持ちを合わせる。

視線を合わせる。

行動を合わせる。

そうしているうちに、いつの間にか、その未来の方へと自分が引き寄せられていく。

沖を見る。

また一本、うねりが近づいてくる。

まだ僕のところには来ていない。

でも、その波は確かにそこにある。

さて。

次は、どの波に乗ろうか。

Ryuei
Surfer・Illustrator&Author

→波待ちダイアリー78 Surf Angel Goes to Hawaii

→波待ちダイアリー80 青空を待ちながら

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